はじめに
「オタク式パロディ作法」ではパロディの観点から「のまネコ」問題を考察した。 しかし件のFlashはわたさんが作ったものであり、avexの関与は少ないので、パロディの観点から考えるのは無理がある。 そこで今回は転載の面から考える。
2ch周辺には本来の著作権(表の著作権と呼ぶ)とは異なる独自のルール(裏の著作権と呼ぶ)があるようだ。 今回は裏の著作権を明らかにし、avexは表の著作権は守っていたが裏の著作権を守らなかったので一部2ちゃんねらに叩かれたのではないか、という話をする。
2ch的な転載ルール
表の著作権では引用の範囲を越える転載は、無許可で行うことはできない。 2ch文化圏では無許可で転載を行っているが、一定のルールがあるように思える。 それは自分のやったことかどうかを明らかにすることである。 これを裏の著作権と呼ぼう。
その具体例は次節で示す。
2ch的コピーライト表記
裏の著作権が表の著作権と異なるのは、「これは他人の作品だ」と示せば「これは誰それの作品だ」と示す必要がないことである。その示し方を挙げる。
まず原典が有名な場合。この場合は転載したのが明白であるから、特に何もしない。 漫画やアニメの画像の転載、楽曲の転載をはじめ、コピペ(例えば吉野家コピペ)もこれにあたる。パロディもこれに含めてよいだろう。
雑誌などの記事の転載の場合。 これは普通は原典を記述する。
他のスレッドやウェブサイトの転載。 「某スレッドからの転載」「とあるブログで見たんだけど」と曖昧な表現をすることが多いようだ。 原典もWeb上にあるのだからリンクを張ってもよさそうなものだが、あまり見られない。 例外は新聞社くらいだろうか。 2chのスレッドはすぐ流れてしまうからリンクする意味がないと考えるのだろう。 ブログ等は2ch経由で訪問者が増え、迷惑をかけるのを恐れているようだ。 どちらにしても「これは自分の書いた文章ではなく、転載である」と示している。
他のスレッドからの転載。 2ch内部からの転載は上のもの以外に形式化された方法がある。 それは名前欄ごとコピペすることである。 例は50番の人が(どのスレかはわからないが)2番の書き込みを転載した様子である。
50 :名無しさん@お腹いっぱい [sage] :2005/10/13(木) 23:59:12 ID:??? 2 :名無しさん@お腹いっぱい [sage] :2005/10/13(木) 23:30:12 ID:??? >>2はうんこ
名前欄があっても通常は「名無しさん」で本人の特定はできないため、 「これは誰それの書き込みだ」という意味はなく、 単に「これは自分の書いた文章ではなく、転載である」と示すだけである。
画像貼り付け系スレッドにおける「転載」。 これはちょっと特殊な形式である。 画像貼り付け系スレッドとは通常アップローダに画像を投稿し、 そのURLを貼り付けていくスレッドのことである。 ここでは特に断わりなくURLが張られたときには「この画像は自分がアップロードしたものだ」ということを意味する。 そうでなく、別のスレッドや掲示板でみつけたURLを張るときには「転載」と書いて 自分でアップロードした場合と区別する。 どちらにしろ、アップロードしただけで、画像を描いたわけではない。 それでもアップロードした人の手柄を自分のものにしないために「転載」と書くのである。
電車男とのまネコ
また電車男とのまネコで比較してみる。 電車男では「ネット掲示板で実際にあったことだ」と強調していた。 これは裏の著作権を守っている。
avexはモナーを元にして別のキャラ(と主張するもの)を作り、「のまネコ」と名付けた。 そして作品には「これはモナーを元にしたものだ」と明記していなかった(らしい)。 これは裏の著作権に反する。 キャラクターをavexが独自に開発したように見えるからだ。
まとめ
裏の著作権は表の著作権とは違う。 無断で転載するなど、表の著作権を無視しているのは事実だが、 裏には裏なりの秩序がある。 それは例えば他人の作品をアップロードしたのが自分なのか、別の誰かなのかを区別するような緻密なものだ。 このルールはあくまでも局所的なもので、社会からみて有効かどうかは別の問題だ。 しかしルールに従う集団の前で、そのルールに反する行動をすれば叩かれるのは当然である。
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匿名環境における「他者」の評価
例えば、有名なネタに限らず、 普通のコピペネタに名前欄がついている例はほとんど無いのではないか。 また、リネージュ2関連の板に限定して言えば、 転載であることを示さずに内容をそのままコピペするケースは多く見られる。
考えてみると転載だと明記されていない転載は、 僕が読んでも転載だとわからないので、 「転載である場合には転載と明記する例が多い」とはいえない。 母数がわからないのだから割合の議論はできない。 反省する。
この文章では転載したことを明記する理由については述べていないつもりだったが、 もしかすると「オリジナルの作者に敬意を表するため」のように 取られてしまったかもしれない。 その点についても反省する。 理由についての議論はいずれ文章にしたいと考えている。