体を割ることについて
先日気付いたことを書く。言葉にすると5年前から知ってたようなことであって、つまりもう習っていたことではあるけれども、やっと実感が追いついてきたということだろうか。具体的なきっかけの1つは杖術での杖の持ち方で、通常であれば掌が触れているようにするのだが、一時的に離して親指と人差し指の付け根で挟むと動きが速くなることだった。もう1つは歩き方で、足を左右に肩幅くらい開いておくとスムーズになるということで、これを杖術に応用して、今までは足を揃えていたところを、左右に開くようにしてみたら、手が追い付かなくなるくらいに動きが速くなったことだった。
一言でいってしまえば「動きの単純化」なのだが、ちょっと考えてみたところ、次の4つの側面がある。
杖術でいえば、手と足のタイミングを合わせて動きたい。そのためには手の動きも足の動きも単純な方がよい。複雑だとタイミングが合わない。掌が杖に触れたまま動こうとすると、そのために必要な動きが増えてしまう。足を揃えるのも同様に手間が増えてしまう。単純化することでタイミングを合わせた並列実行が可能になり、速くなる。
杖術の「下三方」という型で、左後ろを突いたあと、右後ろを突くのだが、一気に動こうとすると意外に遅くなってしまう。左後ろを突き、前に向き直り、右後ろを突くと考えると速くなる一面がある。この手順では、前を向くまでは手は上下の動きに専念しており、右後ろを突くときに左右の動きをする。前を向くところは手の上下運動と、足を動かすことによる胴体の右への回転の並列実行でもあるのだが、ここでは手の動きに注目する。最初に上下運動をして、左右運動に必要な筋肉?を休ませておくことで、速やかに左右の動きができる。連続実行のためには、常に次の動きに備えて、筋肉?を休ませておく必要がある。そうでなければ一旦動きを止めることになってしまう。
一石二鳥は、どれくらい一般化できるのかわからないのだが、杖術では杖の向きを変える動きを利用して、杖に沿って手を滑らせる。こうすることによって必要な動きが減るとも言えるし、個々の動きが単純化するとも言えるし、並列実行になったとも言える。体術でも同様の原理があると思うのだが、現時点では思いつかない。
最後に、連続実行のために筋肉?を休ませているので、常に力を抜いた感覚がある。この感覚を手がかりにするのがよいと思うが、今までイメージしてた「力を抜く」とは微妙に違うので、人へのアドバイスとしては向いてなさそう。
この原則で動くとなると、動きはかなり制限される。例えば手を上げて下ろすだけであっても、下ろす動きを準備しながら上げる必要があるので、どの角度で上げ、どの角度で下ろすのかかが、筋肉や関節の都合で決まってきてしまう。一石二鳥で動くというのも同様に動きを制限するだろう。武術、特に体術として考えると、相手に技をかけるというのも動きの幅を狭くするだろう。逆に言えば、そういった筋肉や関節の構造から動きを考えていけるということもであるが。
僕の杖術の先生である高柳さんは、こういうことを指して「体を割る」と言っていたのではないだろうか。