福冨諭の福冨論

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半身系・向身系と腕に胴体がついていくこと

11月だったか、動作術の会江東友の会の稽古会に2日連続して出る機会があって、ちょうど関連するテーマでもあり、それから2ヶ月くらいはずっとそのことを考えていた。

前にも書いた「半身系」「向身系」と呼ぶ2種類の立ち方の系統があるという考察がある。相手に対してどの向きで立つかという視点の分類だけど、逆に言うと、お臍の向きに対してだいたい並行に力を出すなら向身系、だいたい直角に力を出すなら半身系とも言える。この観点で向身系のバランスの取り方をしておいて前に腕を伸ばすと、胴体がついていく。半身系のバランスの取り方から横に腕を伸ばしても、胴体がついていく。逆の組み合わせだと腕が伸びるばかりで胴体は動かない。この胴体がついていく感じが、動作術の会のその日のテーマだった重心移動と同じなんじゃないか、と思った。というのが経緯。

自分の稽古のために借りてる型でいうと(つまり型本来の解釈とは異なるかもしれないが)、杖術の影踏み・下三方・空手のナイハンチが半身系、杖術の巴・追杖・下段抜き・空手のサンチンが向身系にあたる。とはいえこれらの型はそう分類できるなあと思ったくらいであまり突っ込んで稽古してはいなくて、だいたいドアと引き戸の開閉で検討した。ドアか引き戸か・ドアとの距離・押すか引くかといった状況による使い分けであったり、脚の力なのか体重から来る力なのかわからないけども力をかける方法であったり、ドアの動きに従って腕を伸ばしたり自分が移動したりの方法であったり、移動にともなって角度が変わったり、そういうのを検討した。少なくともドアの開閉に関しては、これは半身系・これは向身系といった使い分けを意識することなく、状況に合わせてバランスを取れば違和感なく動けるというところまで来た。だから半身系・向身系の区別は重要でなくて基本は1つなんだとか言ってしまえばまあそうなんだろうけども、僕は半身系の姿勢で前方向に動こうとして動けないという期間がけっこうあったので、2種類の使い分けというのは重要なポイントだった。

もちろんドアと人間は違う。意外だったのだが、ドアの場合は無意識のうちにやりやすい姿勢を取ってから手をドアノブにかけていたのに対して、対人の場合は最初の接触時点でやりにくい姿勢になっていることがけっこうあり、それなのにやりにくい姿勢のまま動こうとすることが多いということだった。相手との接触点をそのままにしておきつつ、やりやすい姿勢に変わる必要がある。そういう動きは例えば高柳先生や斎藤先生が教えてくれてたのに、なんでこう気付くまで時間がかかるかなあと思うと苦笑する思いだ。この系統だと手に持ったものの重さを体中で感じるという稽古(元ネタは高柳さん)、これの意図することがよくわからなかったが、要は重さを感じる姿勢に変化するということではないかと今は思っている。

前後方向が向身系、左右方向が半身系ならば上下方向はなんだろう。高柳さんの指導内容を思い返してみると、どうも上下方向も半身系のようなのだ。例えば子供を抱き上げるときは肘を外側に出して半身系のバランスを取った方が楽になる(ちなみに肘の方向・肩を上げる下げる・脇を開ける締めるはどうも別の動きのようだ)。なおトイレやお風呂といった便器や湯船があって姿勢の調整がしづらいところでは屏風座りが使いやすいとわかった。これも考えてみれば当たり前のことで、子供の重さが前側にあるなら、自分の体重は後側にかけた方がバランスが取れるし、上半身を前傾させて抱き上げたら腰に負担がかかるのだし、介護術の「添え立ち」も屏風座りベースでやっていた(実用としては自分とほぼ同じ体重の酔っ払いを抱え上げたことがある)。屏風座りもまた、向身系や半身系での背中の筋肉の使い方と共通するものがあるようだ。屏風座りは後ろに体重をかけるので転びそうにな気がして恐いのが難点だ(実際にはバランスが取れて転ばない)。